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多人数用声劇台本

【声劇台本4人】ウォール【2:2・30分】

対アンデット・軍事部隊、東京23区第二小隊は、
隊長・真壁純一の名から「ウォール」と呼ばれている。

〇文字数:約7500文字

〇推定時間:30分

〇登場人物:2:2

真壁純一(まかべじゅんいち):身長181cm、29歳。若く有能。第二小隊隊長。本来は愛情深い人物で超甘党。カレンの前ではお道化た様に話すこともある。

佐久間カレン(さくまかれん):身長162cm、26歳。イギリス×日本のハーフ。第二小隊隊長補佐。真壁に当たりが強いが、彼に対し絶大な信頼を寄せている。

井上義輝(いのうえよしてる):身長176cm、16歳。素直。

本条わかば(ほんじょうわかば):身長159cm、16歳。男勝り。

〇その他 0⇒ト書き

ウォール/筆先ちひろ

/:
/:ウォール
/:
0:   ※
0:   ※
0:   第二小隊ルーム。
0:   義輝、わかばノックと共に入室し、緊張気味に勢いよく挨拶する。

井上義輝:し、失礼します!

井上義輝:本日付けで第二小隊配属となりました、井上義輝(よしてる)です。

本条わかば:同じく、本日付けで第二小隊配属となりました、本条わかばです。

本条わかば:よろしくお願いします!

井上義輝:よろしくお願いします!(わかばに被せるように)

佐久間カレン:ぷっ……(笑う)。よろしくね。新入りさん。

井上義輝:はい! よろしくおねが……あ、あれ?

本条わかば:(小声)ちょっと。隊長って男だって聞いてたけど。

井上義輝:(小声)俺もそう聞いてたんだけど……。

佐久間カレン:真壁隊長なら外よ~。もうすぐ戻ると思うけど。

本条わかば:あ、あの。

佐久間カレン:突入後は周囲の確認を怠らず、対象をいち早く発見すること。訓練中教わらなかった?

本条わかば:あ……、申し訳ありません。

佐久間カレン:……。

本条わかば:……っ。

佐久間カレン:ふふ、ごめんなさいね。威圧する気はなかったの。

佐久間カレン:私は隊長補佐の佐久間カレン。ま、見ての通りイギリス人と日本人のハーフ。

井上義輝:見てもイギリス人だって分らないと思いますけ……ど。

本条わかば:ふん!(義輝の足を踏みつける)

井上義輝:痛ッてぇぇぇー……。

本条わかば:申し訳ありません。井上が余計なことを!

佐久間カレン:ふふ。いいのよ。確かに髪が金色ってだけじゃ、イギリス人とのハーフだって分からないものね。

佐久間カレン:まぁ、それはさておき。

佐久間カレン:今隊長も、隊員もみんな外に出ちゃってるから私しかいないんだけど、二人ともよろしくね。

井上義輝:よ、よろしくお願いします!

本条わかば:よろしくお願いします!

0:   井上義輝、本条わかば、お辞儀する。
0:   ※
0:   ※

佐久間カレン:(M)対アンデット・軍事部隊、

佐久間カレン:(M)東京23区・第二小隊は、隊長・真壁純一の名から「ウォール」と呼ばれている。

佐久間カレン:(M)井上義輝、本条わかばの二名が、同第二小隊に配属されたのは、8月2日のことであった。

0:   ※
0:   ※
0:   間。
0:   会議室。真壁、椅子に座っている。
0:   カレン、スクリーンを使って講義している。
0:   わかば、義輝、座って講義を聞いているが、義輝、居眠り中。

佐久間カレン:アンデット化ウィルスは血液感染のみ。

佐久間カレン:感染ステージ1(ワン)、めぼしい自覚症状なし。

佐久間カレン:ステージ2では、手足のむくみ、疲労感が現れる。

佐久間カレン:ステージ3では、激しい頭痛を

井上義輝:ぐおお(大きないびき)

佐久間カレン:……(溜息)ステージ3では、激しい頭痛を訴えるようになる。ステージ4では、

井上義輝:ぐおお(再びいびき)

本条わかば:ちょ、ちょっと義輝起きなさいよ。義輝ってば……。

真壁純一:井上。

井上義輝:すーすー。

真壁純一:おい、井上!(机を叩く)

井上義輝:はっ。

真壁純一:おはよう。

井上義輝:おはようございま……ま、真壁たいちょ、あっ、や、あの、すいません! すいません!

本条わかば:……ばか。

真壁純一:随分と、気持ちよさそうに眠っていたようだが?

井上義輝:もももも、申し訳ありません!

真壁純一:井上ぇぇぇー!

井上義輝:はいぃぃぃー!

真壁純一:感染症状を段階ごとに言ってみろ。ステージ……(義輝食い気味に次のセリフ)

井上義輝:はいっ! えっと、ステージ1、自覚症状なし……。

真壁純一:ステージ4からでいい。お前が寝ている間にステージ3までは確認が済んだ。

真壁純一:それから、人の話は最後まで聞け。

井上義輝:も、申し訳ありません。

真壁純一:まったく。ん、ほら答えろ。

井上義輝:ステージ4、おおよそ3~24時間の沈黙ののち、ステージ5へと移行。

井上義輝:ステージ5で感染者は、

真壁純一:対象だ。

井上義輝:っ。

真壁純一:ステージ3までは「感染者」とするが、それ以降「対象」と呼ぶ。教わっただろう。

井上義輝:も、申し訳ありません……。

真壁純一:(溜息)。ステージ5では?

井上義輝:ス、ステージ5では、対象は完全に自我を失い、身体能力が大きく向上、攻撃性が増し、……脳を破壊しない限り再生を続けるアンデット状態となります。

真壁純一:ま、俗に言うゾンビというやつだな。

佐久間カレン:(咳払い)対象です。

真壁純一:……それで、現在の治療法は?

井上義輝:え?

真壁純一:現在治療法はあるのかと聞いている。

井上義輝:あ、ありません。

真壁純一:正解だ。座れ。

井上義輝:はい……。

真壁純一:感染者は施設へ完全隔離。ステージ4となった時点で、毒物による殲滅を行う。

真壁純一:まぁこれは隣の第三小隊が行っているわけだが。

真壁純一:我々第二小隊は、ステージ5の殲滅が主な仕事だ。

真壁純一:ステージ5にはガスや毒物も効かん。脳そのものを吹き飛ばす必要がある。

真壁純一:昨日のように迷っている暇はないぞ、井上。

井上義輝:……っ。

真壁純一:迷えば死人が増える。俺たちの仕事は、そういう仕事だ。

0:   間。

佐久間カレン:(M)未だ治療法のないアンデット化ウィルスへの感染、それは人としての死を意味した。

佐久間カレン:(M)感染からステージ4まで、おおよそ3週間。

佐久間カレン:(M)感染者を隔離する施設は、まるで刑務所のようだった。

佐久間カレン:(M)家族と会うことも許されず、友人と会うことも許されず……。

佐久間カレン:(M)井上義輝、本条わかばの二名が、ステージ5殲滅に同行したのは、入隊からわずか二週間、8月17日のことであった。

0:   ※
0:   ※
0:   第二小隊ルーム、真壁、カレンの2名がいる。

佐久間カレン:……彼らの同行は少し早すぎたのではないでしょうか。わかばちゃんは兎も角、井上君は特に。

真壁純一:遅ければいいということでもないだろう。

佐久間カレン:確かにそうですが。

真壁純一:まぁそう重く考えずにだな。

佐久間カレン:重く考えたくもなります! 彼らで何人めだと思っているんですか!

真壁純一:あー……、前回が鈴木に谷口……、それから常に帽子を被っている変な奴に、その前がえーっと、ひーふーみ、あっ、そうだ君と同じハーフの子もいたな。

佐久間カレン:彼はクォーターです。

真壁純一:あ、はは。そうだった。そうだった! えーっとなんという名前だったか……。あ、ウェルター! そう、確かウェルターだ!

佐久間カレン:んんんんんん、(真壁の言い方にわなわなとして)

佐久間カレン:そんなこと聞いているんじゃありません!あと、ウェルターじゃなく、ウォルター君ですっ!

真壁純一:ははは……。そうだったかな。

佐久間カレン:本部から配属がある度に! 毎回! 次は何か月続くかって、他の隊から言われるんです。「ははは……。そうだったかな」じゃないです、まったく。

佐久間カレン:冗談は顔だけにしてください。

真壁純一:にっ。(変な顔をして見せる)

佐久間カレン:普段から冗談みたいな顔なので、そんな顔しなくても大丈夫です!

真壁純一:……なかなか今日はキツイな。

佐久間カレン:キツく言いたくもなります。

真壁純一:……表向きは花形戦闘部隊、しかし、蓋を開ければ俺たちはただの人殺しだ。

佐久間カレン:……っ。

真壁純一:平和ボケのせいか、最近ではあのゾンビ共を新人類だと言う団体までいる。

真壁純一:軍がどんな思いでこの仕事をしているか、考えもしないんだろうな。嫌にもなるだろう。辞めるなら早い方がいい。

佐久間カレン:……またそんな言い方を。

真壁純一:佐久間補佐官、初めてステージ5を殲滅したのは?

佐久間カレン:15の時ですが。

真壁純一:そうか。俺は、13の時だった。考える暇も、迷う自由もなかった……。

真壁純一:平和な世になったじゃないか。

真壁純一:仕事が終われば酒を飲み、馬鹿笑いすることもできる。武器を握らない選択肢も用意されている。血に濡れず生きることができる時代だ。

佐久間カレン:そう彼らに言ってあげればいいじゃないですか。

真壁純一:それとこれとは別だ。第二小隊には死が付きまとう。ここぞという時に迷うようでは隊そのものが壊滅する恐れもある。

佐久間カレン:……。

真壁純一:心を殺し、銃を撃つ。そう育てなくてはならない。

真壁純一:……しかし、不思議なことだ。

真壁純一:これだけ各国が躍起になって対処しているというのに、未だステージ5が街に現れる。血液感染のみなのに、だ。

佐久間カレン:確かに……。言われてみれば、既に封じ込めが成功していてもおかしくはない。

真壁純一:何かの組織か、はたまた国家の陰謀か……。

佐久間カレン:誰かがウィルスを意図的にばら撒いているっていうんですか⁈

真壁純一:まぁ、これは俺の独り言だと思ってくれ。

真壁純一:……さて、少し出かけてくる。

佐久間カレン:どちらへ?

真壁純一:変わり者の巣窟、第三小隊。

佐久間カレン:(溜息)。隊長も中々に変わり者だと思いますけど。

真壁純一:なっ、そんなことは無いだろう。立派に隊長を務めているつもりだが?

佐久間カレン:ウォールを率いる若き実力者、しかし実は超甘党。

真壁純一:どこかの補佐官が毎日毎日辛辣な言葉を投げつけてくるのでね、せめて飲み物くらい甘い方がいいだろう?

佐久間カレン:ふふ。

0:   真壁、カレン互いに仕方ないという様子で笑う。

真壁純一:彼らのこと気にかけてやってくれ。気遣いなら君の方が得意だろう。

佐久間カレン:またそんなことを言って……。

真壁純一:ははは、まぁそう渋い顔をするな。では、行ってくる。

0:   ※
0:   ※
0:   間。
0:   井上義輝、本条わかば腕立て中。

 

井上義輝:(息を切らしながら)294、……くっそ腕立て300回って、鬼かよ。295。

本条わかば:(息を切らしながら)寝てるからでしょ。だいたい、なんで私まで。296!

井上義輝:連帯責任。297!

本条わかば:あんたがそれ言う? 298!

井上義輝:へへ。……299、さん、びゃ……く!

本条わかば:はーー。終わった……無理、死ぬ。

井上義輝:死ぬーーーー。

本条わかば:うー、酸欠で頭ガンガンする……。

0:   義輝、わかば、少しずつ息を整える。

本条わかば:ほんっと、あの状況で居眠りとか信じられない。

本条わかば:あとで、なんか奢りなさいよ。

井上義輝:食堂のとんかつは?

本条わかば:無理、脂っこい。こないだ食べておなか壊した。

井上義輝:へー、お前でも腹壊すことあるんだ?

本条わかば:どういう意味よ。んっ!(殴る)

井上義輝:痛ってぇ。やめろって。暴力反対!

本条わかば:あーもう、なんでこんな奴と同じ隊なのよ。

井上義輝:あぁ? それならこっちだって小柄で可愛いアイちゃんと一緒が、って、すぐ叩くなって。

本条わかば:あーもーほんっと体力馬鹿。

井上義輝:それはわかばも一緒だろ?

本条わかば:んん? 誰か体力馬鹿よ?

井上義輝:馬鹿力って言われてただろ?

本条わかば:ん(殴る)

井上義輝:痛ってぇ!

本条わかば:あぁん?

井上義輝:わ、悪かったって。

本条わかば:あんたは(殴る)もう少し(殴る)デリカシーとか(殴る)、そういうの覚えなさいよね。

井上義輝:いでででで、ご、ごめんって……昨日さ、眠れなかったんだよ。

本条わかば:はぁ?

井上義輝:ステージ5だって言ってもさ、見た目は人だろ?

本条わかば:再生繰り返してるうちに見た目も化け物になるけどね。

井上義輝:まぁそれは……。

井上義輝:んでもさ、家族がいて、子供がいて、それで、普通に笑ってたかもしれなくて、

井上義輝:頭吹き飛ばすってさ、そうしなきゃいけないって分かってんだけどさ~。

本条わかば:……。

0:   微妙な沈黙。

井上義輝:あー……、そーいやお前兄弟いる?

本条わかば:なによ急に。

井上義輝:なんかしっかりしてるから、妹とか弟とかいそうだなーって。

本条わかば:……4つ上の兄貴ならいるけど。

井上義輝:へー。意外。

本条わかば:どういう意味よ。

井上義輝:あ、や、別に悪い意味じゃなく……。言っただろさっき、しっかりしてるって。

本条わかば:ふーん。あんたは?

井上義輝:え?

本条わかば:人に聞いといて自分は言わないつもり?

井上義輝:いや別にそういうわけじゃねーけど。

本条わかば:いるの? 兄弟。

井上義輝:……姉ちゃんがいた。

本条わかば:いたって……。

井上義輝:……死んだんだ。

本条わかば:ごめん。

井上義輝:なんで謝るんだよ。

本条わかば:……なんとなく。

井上義輝:姉ちゃんさ、俺なんかと違って優秀で、結婚も決まってて。結構美人だったんだ。

井上義輝:……それがどこで感染したのか、俺が遊び歩いてる間に、父さんも母さんも、みーんな感染してた。なんで俺だけ生き残ったんだろーって、ずっと思ってた。

本条わかば:……。

井上義輝:これ以上俺みたいな思いする人増やしたくなくてさ、……だから、第二小隊希望したんだ。

本条わかば:そっか……。

井上義輝:いつか……。

本条わかば:……ん?

井上義輝:いつか隊長とかカレンさんみたいに、平気な顔してステージ5殺(や)るようになんのかな……。

本条わかば:嫌なら無理しなくてもいいんじゃない?

本条わかば:どんなに取り繕ったって、私たちのしてることって人殺しだし。義輝のその感覚って普通なんだと思う。

井上義輝:……そうかな?

本条わかば:たぶん、そうよ。

井上義輝:そっか……。

本条わかば:まぁでも隊長もカレンさんも平気な顔してるけど、平気でやってるわけじゃないと思う。

井上義輝:そう、だよな……。

本条わかば:うん。

本条わかば:……あんたさ~、結構シスコンなのね。

井上義輝:はぁ⁈

本条わかば:お姉ちゃん大好きじゃない。

井上義輝:悪いかよ。そういうお前こそブラコンなんじゃねーの?

本条わかば:んなわけあるか!

井上義輝:はぁ? どーだかな。実はお兄ちゃん、お兄ちゃん言ってたりして。

本条わかば:絶対ない。うちの兄貴はくそ野郎だから。絶対、ない。

井上義輝:……ふーん。

0:   ※
0:   ※
0:   間。
0:   真壁、カレン演習場にいる。

佐久間カレン:昨日第三へ何をしに行ったのかと思えば……(溜息)こんなことだろうと思いました。

真壁純一:そう怖い顔をするな。

佐久間カレン:無礼を承知で言いますが、最低ですね。

真壁純一:うっ……。まぁこれも必要だろう。

佐久間カレン:嫌われますよ。

真壁純一:構わんさ。上司というのは、いつの時代も嫌われるものだろう?

佐久間カレン:その古い考え、いい加減改めたらどうです?

真壁純一:さて……、そろそろ来る頃かな。

佐久間カレン:(溜息)。

井上義輝:失礼します!

本条わかば:失礼します!

真壁純一:揃ったな。

真壁純一:これより、本日の演習を行う。

真壁純一:井上! 本条! 銃を持て。

本条わかば:……っ。実弾での演習ということでしょうか?

真壁純一:そうだ。

真壁純一:血液感染である以上、対象とは距離を置いた戦闘が基本となる。

真壁純一:そこで使うのが、お前たちが常に携帯しているこの銃なわけだが。

真壁純一:今日の的(まと)は、アレだ。

0:   真壁、ステージ4(幼い子供)を指さす。

本条わかば:……っ!

井上義輝:ま、的って……。

真壁純一:一発だ。一発撃ち込めばいい。そのために作られた銃だからな。

真壁純一:井上、前へ。

井上義輝:……っ。

本条わかば:ま、待ってください隊長! 的って……子供じゃないですか!

真壁純一:違う。ステージ4。「対象」だ。井上、前へ。

井上義輝:……っ。

真壁純一:どうした井上。前へ出ろと言っている。

本条わかば:ス、ステージ4は毒物による安楽死が基本です! そうですよね? カレンさん!

佐久間カレン:えぇ、でもあくまで基本。 ステージ5との戦闘をしなければならない我々第二小隊は、訓練での殲滅が許可されている。

真壁純一:ここで出来なければ実際の戦闘で出来るわけがないからな。

本条わかば:……カレンさんは撃てるんですか?

佐久間カレン:命令があれば撃つわ。

本条わかば:……っ。でも、何も子供を選ぶなんて……酷い。

真壁純一:敵に大人も子供も関係ない。

真壁純一:例え赤子の姿であっても、俺たちは撃つ。それが第二小隊だ。井上、前へ。

井上義輝:くっ……はい。

本条わかば:義輝!

真壁純一:構え。

0:   義輝、銃を構える。

真壁純一:撃て。

井上義輝:……。

真壁純一:どうした? 撃て。

井上義輝:……。

真壁純一:撃てぇぇぇー!

井上義輝:撃てません! ……俺には、俺には撃てません!

井上義輝:子供です! あそこにいるのは子供です……。

真壁純一:違う! ステージ4。殲滅対象だ。

井上義輝:しかし……。

真壁純一:しかし何だ? お前らは何のために第二小隊へ来た? 市民を守るため、ここに来たのではないのか?

真壁純一:本条! 撃てるか?

本条わかば:……う、撃ちたくありません。

真壁純一:なぜだ。

本条わかば:本部にいるステージ4は撃つ必要がないからです!それに、あれは……子供です。

真壁純一:では街へ出れば撃てるのか?

本条わかば:撃ちます!撃ってみせます。

真壁純一:無理だな。実際の戦闘でもそうやって迷うだろう……死ぬぞ?お前ひとりの判断で、仲間も、市民も。あっという間だ……。

本条わかば:……っ。

真壁純一:あれは次期にステージ5になる。そうなれば人を殺して歩くだろうな。子供でも!

真壁純一:井上、銃を構えろ。

0:   井上、息荒く銃を構える。

真壁純一:一瞬の迷いが新たな感染を生む。

井上義輝:(息が上がっていく)。

真壁純一:人間としての生はステージ3までだ。だからこそステージ4からは「対象」とした。

真壁純一:このままいけばあの対象は誰かを殺す。

真壁純一:救ってやれ。

井上義輝:……(段々と息荒く)。

真壁純一:お前がやらないのなら俺がやる。撃て。

井上義輝:……。

真壁純一:撃てぇぇぇー!

井上義輝:ああああああああ!

0:   義輝、震えながらもステージ4を撃ち抜く。

佐久間カレン:(M)その引き金はどれほど重かっただろうか。

佐久間カレン:(M)一発の銃弾が幼い少女、いや、ステージ4の脳を貫いた。

佐久間カレン:(M)人類は生き抜くため、その行いを救いとした。

佐久間カレン:(M)それが正しいのか、正しくないのか。誰にも分らない。

佐久間カレン:(M)ただ私たちは家族を守るため、愛するものを守るため、生き抜くため、そうするしかなかったのだ。

0:   ※
0:   ※
0:   間。
0:   第二小隊ルーム。

佐久間カレン:あの二人、来るでしょうか。

真壁純一:どうだろうな。

佐久間カレン:またそんな他人事みたいに言って。

真壁純一:あはは……。ぶっ、き、今日のコーヒー苦い気がするんだが気のせいかな?

佐久間カレン:気のせいじゃないですか? 塩を入れなかっただけありがたく思ってください。

真壁純一:そのうち毒でも盛られそうだな……。

佐久間カレン:何か?

真壁純一:い、いや。いつも美味しいコーヒーをありがとう。あはは……。

佐久間カレン:本当は心配なくせに。あんなやり方じゃなくても

真壁純一:あんなことが俺たちの仕事だ。誰かがやらなくてはならない。

佐久間カレン:……(溜息)。

0:   義輝、わかばドアをノックして入ってくる。

井上義輝:おはようございます。

真壁純一:おはよう。

本条わかば:おはようございます。

真壁純一:おはよう。昨晩はよく眠れたか?

井上義輝:いいえ。

真壁純一:そうか。手荒な真似をしてすまなかった。

真壁純一:しかし、あれが、第二小隊の仕事だ。嫌だというのなら今のうちに

本条わかば:私は! 私は、兄に追いつくまで辞めません。

真壁純一:そうか。

本条わかば:本日もよろしくお願いいたします。

真壁純一:よろしく。……井上、お前はどうする?

井上義輝:俺は、隊長のように無表情で撃ち抜くことはできません。

真壁純一:そうか。なら

井上義輝:でも! 誰かがやらなきゃいけないなら、俺がやります。

井上義輝:もう俺みたいな思いをする人を増やさないって、そう決めたから。

真壁純一:……そうか。

真壁純一:では、今日もよろしく頼む。

0:   真壁、かすかにほほ笑む。
0:   間。

佐久間カレン:(M)私は、真壁隊長のこの時の表情を、決して忘れないだろう。

佐久間カレン:(M)対アンデット・軍事部隊、

佐久間カレン:(M)東京23区・第二小隊は、隊長・真壁純一の名から「ウォール」と呼ばれている。

佐久間カレン:(M)井上義輝、本条わかばの二名が、ステージ5殲滅に本格的に加わったのは、それから一か月後のことであった。

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