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多人数用声劇台本

【声劇台本2人】明日死ぬ猫【不問2・20分】

〇文字数:約6000文字

〇推定時間:20分

〇登場人物:不問2

クロ:いじめられっ子の野良猫

シロ:変わり者の家猫

〇その他 0⇒ト書き

しゃろうさんの野良猫は宇宙を目指したというフリー素材BGMが大好きです。

明日死ぬ猫/筆先ちひろ

/:
/:『明日死ぬ猫』
/:

0:   シロ、庭で居眠り中。
0:   クロ、忍び寄る。

シロ:すぴーすぴーふにゃぁ、いい天気…。

クロ:うーにゃおー!

シロ:うわぁぁぁ、びっくりしたぁ。

クロ:あはは、相変わらず間抜け顔!

シロ:もー背後からくるのいつも

クロ:いつもやめろって言ってるだろ!

シロ:……わかってんならやめろよな。

クロ:へへへ。背後から襲いたくなるのは猫の

シロ:猫の性(さが)。

クロ:わかってんなら黙って襲われ、ろっ!んにゃー。

シロ:わー、やめろやめろ!これだから野良猫は。

クロ:なんだと? 身体が鈍った(なまった)家猫め!

クロ:くらえ、猫拳法にゃにゃにゃいーん!

シロ:ぶっ、なんだよそれ。

クロ:にゃにゃにゃいーん。

シロ:だからやめろって。

クロ:へへへ、教わった。

シロ:誰から?

クロ:二丁目のトラオ。

シロ:あー、あのチンピラの?

クロ:チンピラじゃねーって。

シロ:えーだって魚屋から魚くすねたって。

クロ:かっこいいじゃん!

シロ:はぁ?

クロ:あばよ!この魚はもらってくぜ!タタタタタッ。

シロ:急に誰?

クロ:魚盗んだトラオのマネ。
クロ:待ちやがれこの泥棒猫~~!(魚屋のおやじ風)
クロ:はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、
クロ:待て待てー!(魚屋のおやじ風)
クロ:はぁ、はぁ、はぁ、なんとか巻けたぜ!
クロ:……モモコちゃん、これ受け取ってくれにゃ。命がけで盗ってきたんだぜ!

シロ:モモコちゃんって誰?

クロ:トラオの彼女。
クロ:ありがとう、トラオ!大好きにゃ。
クロ:モモコちゃん! トラオ!

0:   クロ、モモコとトラオになりきり抱き合う動作。

シロ:いや、それ盗んだ魚だから。

クロ:にゃーにゃーにゃにゃーんにゃー

シロ:え、なに二人とも盗んだ魚で結ばれたの?

クロ:今子猫6匹いる。

シロ:展開はや。

クロ:猫の妊娠期間は約2ヶ月。

シロ:知ってる。俺も猫だし。

クロ:生まれた子猫はすくすく育ち、

シロ:ん?

クロ:親から盗んだ魚を盗むその技で日夜魚屋から魚を盗んでいるそうな。

シロ:え?

クロ:親から盗んだ魚を盗むその技で日夜魚屋から魚を盗んでいるそうな!

シロ:よくわかんないけど
シロ:二丁目の魚屋も楽じゃないね。

クロ:なんでだよ、分かれよ。2回も言ったのに。

シロ:あ、それよりさ。

クロ:ん?

シロ:昨日ご主人にいいもん見せてもらったんだ!

クロ:何?魚?

シロ:違う。

クロ:親から盗んだ魚を盗むその技で

シロ:あーあーもうそれはいいから、って、また怪我したのか?

クロ:ん?あぁ、この傷?たいしたことねーよ。

シロ:はぁ……喧嘩もほどほどにしろよ?

クロ:あはは、うん。んで?良いもんって?

シロ:お前さ、宇宙って知ってる?

クロ:うちゅう?

シロ:そう、宇宙。

クロ:新種の魚?

シロ:違う。魚はもう忘れろ。

クロ:親から盗んだ魚を盗むその技で

シロ:ん!

クロ:んぶ。いってぇ!叩くことねーだろ!

シロ:軽い猫パンチだろ。
シロ:体が鈍った家猫のパンチくらい避けろ。

クロ:分かんないかなー?わざとくらってあげたの!

シロ:はいはい、はいはいはいはい
シロ:そーですか。そーですか!

クロ:んだよ、その言い方。

シロ:へへへ。

クロ:んで、宇宙ってなに?

シロ:ん?あぁ、俺たちがいるここは地球っていって。

クロ:うん。

シロ:空のずーっと上に、宇宙ってのがあるんだって。

クロ:うん?

シロ:地球よりずーっとでかい星があって。

クロ:おお。

シロ:そこ宇宙人ってのがいるかもしれないんだってさ。

クロ:ふーん。

シロ:……反応薄いな。

クロ:だってどのくらい遠いか分かんないし。

シロ:めっちゃ遠いんだよ。空よりずっと先。

クロ:行きたいの?

シロ:んー行きたいってよりは見たい。

クロ:ふーん。

シロ:見たい!

クロ:いや、俺に言われても……。
クロ:空までってどんくらい?二丁目より遠い?

シロ:二丁目よりは遠いと思う。

クロ:んじゃ隣町は?

シロ:それよりも、多分遠い。

クロ:ふーん。
クロ:んじゃ、そのまた隣の日並町(ひなみまち)くらい?

シロ:あー、そうかも。それくらいかも。

クロ:ふーん。遠いな。

シロ:遠いね。

クロ:んで?

シロ:ん?

クロ:そこに宇宙人とかがいるのか?

シロ:うん。そこに、こーんな目でっかいやつとかいるんだってさ。

クロ:ぶっ。そんなでっけー目のやつほんとにいるの?

シロ:いるんだって。

クロ:へー、すげーなぁ。

シロ:すごいだろ?

クロ:うん。

シロ:夜キラキラしてるあの星も、宇宙にあるんだってさ。

クロ:へー。

シロ:んでな、そこの宇宙ってとこはすっごい、すっごいすっごい広くて、

クロ:うん。

シロ:あのキラキラ光ってるのはずーっとずーっと昔に光った光なんだってさ。
シロ:図鑑ってやつで見せてもらった!

クロ:……お前やっぱ賢いな。

シロ:なんだよ急に。

クロ:家猫って変なやつばっかだと思ってたけど、
クロ:いや、お前も変なやつだけど、でも、賢い。

シロ:なんだよそれ、
シロ:貶(けな)すか褒めるかどっちかにしろ。

クロ:あはは、俺の自慢の友達!

シロ:なんだよもー気持ち悪い、てかお前も変な野良猫だな!

クロ:そうか?

シロ:そうだよ。変だけど、でもいい奴。

クロ:にゃにゃにゃいーん。

シロ:猫拳法やめろって。

クロ:あはは。ところで今日にゅーるないの?

シロ:にゅーる?

クロ:ないのないのー?
クロ:あのおやつちょーうまいじゃん。
クロ:ねぇ、ないのないのー?

シロ:あぁ、にゃーるね。
シロ:ないよ。にゃーるは金曜しかもらえない。

クロ:えー金曜っていつ?

シロ:今日が水曜だから、明後日。

クロ:えぇぇえ?! 明後日?!

シロ:そう、明後日。

クロ:明後日っていつ?

シロ:……明日の次。

クロ:あ、あーおけ!明日の次な!
クロ:んじゃまた明後日来るわ!

シロ:もらう気満々だな。

クロ:お前のご主人優しいからな。
クロ:遊びに来ても殴られないし。野良猫の俺にもにゃーるくれるし!

シロ:……うちで一緒に暮らせば良いのに。

クロ:いいんだよ、俺は野良が性に合ってるの。
クロ:宇宙の話面白かった!また明後日な!

シロ:あ、うん。またねー。

0:   間。

クロ:(M)せっせと働く蟻の行列、
クロ:(M)ぽとりと落ちる朝露の残り、
クロ:(M)さらっと揺れた葉っぱ。
クロ:(M)その間から、きらりと差す日差し。

クロ:(M)あの真っ青な空までの距離は、この町から、日並町くらいまでだって
クロ:(M)変わり者のあいつが言っていた。

0:   金曜日、クロ、にゃーるを食べている。

クロ:はー、にゃーるうめー!うめぇぇぇー!

シロ:お前、がっつき過ぎ。

クロ:だってうめーんだもん。

シロ:まぁ、分かるけど。っておい、いつまで皿舐めてるんだよ。

クロ:ばっか、取るなって全部堪能したいんだよ。最後なんだから。

シロ:はぁ? もう全部堪能しただろ!ったく。

クロ:あー山盛り食いてぇ~。

シロ:太るよ。

クロ:あーなるほどそれでお前こんなたぷたぷなんだな。

シロ:ん!(殴る)

クロ:いでで、加減しろって。

シロ:ベー!

クロ:ったく……なぁ、ちょっと外行かねーか?

シロ:外?

クロ:うん、外。腹も膨れたし、運動がてら。

シロ:えー、ご主人が心配するから嫌だよ。

クロ:頼むって! 一生のお願い!

シロ:出たそれー、何回も一生あるやつだろ?

クロ:ないない、ないから! 頼むよー。

シロ:えーやだよー。昼寝したい気分。

クロ:これっきりだからさ。

シロ:えー。

クロ:どうしても連れて行きたいとこあるんだよ。

シロ:えぇ~。だって今から出たらもう夜なるぞ?

クロ:猫は元々夜行性だろ!
クロ:な? 頼むよ~。ねー。ねーねーねーねー。

0:   間。

シロ:はぁ……はぁ……
シロ:聞いてないぞ、こんな山登りするなんて。

クロ:悪い悪い、もうちょっとだから。

シロ:家猫の体力の無さ舐めんなよ。ゼェ……ゼェ……。

クロ:もうちょっとだって、ほらここだ、ここ!

シロ:待ってって……。そんなに早く行けないって。

クロ:あーもう、おっせーな。ほら押してやるから。

シロ:お、押すたって、お前もうちょっと優しく押せって……
シロ:は? え? この木登るのか?

クロ:そうだよ。

シロ:えぇぇ、俺木登りとか得意じゃないって。
シロ:わあああああ押すな押すな。

クロ:いいからだまって登れ。

シロ:ああああうわぁぁぁ落ちる落ちる!

クロ:落ちねーから。早く、ほら、そこの枝乗れ。

シロ:ああああぁぁぁぁ

クロ:猫のくせに運動音痴かよ。ったく。

シロ:あああああああああ……あ。

0:   クロ、シロ高い木から夜景を見る。

クロ:……出来たじゃん、木登り。

シロ:……。

クロ:……ぷっ。

シロ:……。

クロ:なんか言えって~。

シロ:うわぁぁ、押すなって。おおお、落ちるだろ。

クロ:落ちねーよ。

シロ:うん……。

クロ:ほら、あそこが隣町で、あっちが

シロ:日並町。

クロ:そ。

シロ:……すげぇ。すげえな!
シロ:こんなキラキラしてるところあるんだな!

クロ:わ、ばか! 押すなって落ちるだろ!

シロ:だって、だってさ、こんなすげーの見たことねーよ!

クロ:きれーだろ?

シロ:うん! わ、あそこ見てみろよ、キラキラが動いたぞ!

クロ:……なぁ、こないだ言ってた宇宙ってさ、案外近い気がしてこねーか?

シロ:え?

クロ:お前言ってただろ。
クロ:宇宙ってーのは、空の上にあって、そんで空までは日並町くらいの距離だって。

シロ:あ、あぁ……。

クロ:ぶ。興奮しすぎだろ。自分で言ったこと忘れんなって。

シロ:だって、いつも家にいるし。

クロ:……いっぱい色んなとこ行けよ。いつか宇宙も見れるかもしれねーぞ。

シロ:行きたいけど……。

クロ:けど?

シロ:ご主人が心配するし。

クロ:ま、それもそうか。

シロ:なぁ、ここじゃなくてもこんな綺麗なところあるのか?

クロ:あるよ。

シロ:連れてってくれよ!

クロ:ご主人はいいの? 心配すんだろ?

シロ:な、なんとかする……。お前と一緒なら多分大丈夫だし。

クロ:そうだなぁ、カラスのかぁ吉に頼んどくから連れてってもらえよ。
クロ:あいつも色んなとこ知ってるから。

シロ:そうなのか!
シロ:ってか、まずはお前が知ってるとこ連れてってくれよ!

クロ:……うん。

シロ:なんだよ、なんでそんな嫌そうなんだよ。傷付くだろ……。
シロ:あ、わかった! 俺の脚が遅いからだな!
シロ:頑張って運動するからさ、昼寝も減らして。な?

クロ:そうだなぁ、そのたぷたぷのお腹の肉まずなんとかしないとな。

シロ:う……が、がんばる。がんばるから。

クロ:うん。

シロ:痩せたらちゃんと連れてけよ!

クロ:……うん。

シロ:なんだよ、何かほかに問題あるのか……よ。

クロ:……。

0:   クロ、シロへぎこちなく笑いかける。

シロ:お前……まさか。

クロ:……。

シロ:来たのか?猫又が⁈

クロ:……うん。

シロ:いつ!

クロ:え?

シロ:いつ来たんだって聞いてんだよ!

クロ:いつだったかなぁ~。

シロ:ん!

クロ:んぶ、いってーな。殴るなよ。落ちるだろ~。

シロ:いつだって……聞いてんだよ。ちゃかすな。

クロ:……一週間前くらい。

シロ:い、一週間前って……!

クロ:明日だってさ。

シロ:……っ。

クロ:明日。

シロ:あした……。

クロ:そう、明日死ぬ。へへ。

シロ:……。

クロ:そんな顔すんなって。
クロ:生まれたときから決まってるだろ?
クロ:死ぬ前に猫又が現れる。それで、いつ死ぬか教えてくれて、んで迎えに来る。
クロ:人間様も知らない、俺たち猫の七不思議。ってね、へへ。

シロ:なんで……、なんで言ってくれなかったんだよ。

クロ:言ったらお前、困るだろ。
クロ:お前は、賢いから。

シロ:……っ。

シロ:……逃げよう!

クロ:えー逃げようって、どこに?

シロ:う、宇宙だ! あそこならきっと猫又も来ないし。

クロ:どうやって空超えるんだよ。
クロ:山登るだけでくたくたなのに、日並町より遠い宇宙なんて行けんの?

シロ:……っ。

クロ:ばかだなぁ。

シロ:ばかだよ。ばかでいいから……。

クロ:……賢いよ。

シロ:……。

クロ:お前は、賢い。それに優しい!
クロ:俺さー、こんな身なりだから、嫌がられること多くて。
クロ:汚い、あっち行けーってさ。
クロ:でもお前と、お前のご主人は大丈夫かって言って、それでこんな俺にも優しくしてくれた。

シロ:……そんなの当たり前だろ。

クロ:当り前じゃねーんだよ。
クロ:この傷も、喧嘩だって言ってたけど。
クロ:ほかの野良猫にいじめられてただけだしな。

シロ:どいつだよ。

クロ:ん?

シロ:俺が、俺がそいつぶん殴ってやる。

クロ:ばーか、家猫のお前じゃ勝ち目ねーよ。
クロ:ケガするから大人しくしとけ。賢いんだから分かるだろ?

シロ:大人ぶりやがって……。
シロ:お前の方がずっと賢いだろ!
シロ:俺なんて外のこと全然知らないし、
シロ:ご主人から教えてもらったこと、ただひけらかして、……それで賢いふりして。

クロ:外のことは俺の方が詳しいけど、でもお前はいろんなこと知ってる。
クロ:宇宙もそうだろ? やっぱり賢いよ。

シロ:う……うぅ。

クロ:なんだよ、泣くなよ。

シロ:うるせー、俺はお前が好きだったんだよ。
シロ:みんな変わり者って俺のこと馬鹿にして……。
シロ:でもお前は俺の話いつも聞いてくれるし。大事な、大事な友達だったんだよ!

クロ:……ありがとな。お前のお陰で、楽しい毎日だった!
クロ:そうだ!どうしてもさみしくなったら、空に話しかけろよ。

シロ:へ?

クロ:空の先に宇宙があるんだろ?
クロ:俺きっとそこに居るから。

シロ:死んだら宇宙に行くのか?

クロ:それは分んないけど。

シロ:ん!わかんないんじゃねーか!

クロ:あはは、叩くなって。
クロ:分かんないけど、分かんないから、
クロ:死んだら宇宙目指してみる!
クロ:日並町があそこだろ? きっと俺らが思ってるより宇宙って近いんだよ。
クロ:そこでお前のこと待ってるから。ゆっくり来いよ。

シロ:う、う、うゎぁぁぁぁぁん。

クロ:何でお前が泣くんだよ。

シロ:うるさい、お前が泣かないから代わりに泣いてやってんだ。うわぁあああああああん。

クロ:お前が泣いたら俺まで泣きたくなるだろ。

シロ:うわぁああああああん。

クロ:なんだよ、もう、ううわぁああああああん。

0:   クロ、シロひとしきり大声で泣く。
0:   間。

シロ:(N)街からちょっとだけ離れた山の上。
シロ:(N)いじめられっ子の野良猫が一匹と、変わり者の家猫が一匹。
シロ:(N)肩を並べてたくさん泣いた。
シロ:(N)たくさんたくさん泣いたその声は、きっと宇宙にも届いただろう。

0:   間。

クロ:(M)せっせと働く蟻の行列、
クロ:(M)ぽとりと落ちる朝露の残り、
クロ:(M)さらっと揺れた葉っぱ。
クロ:(M)その間から、きらりと差す日差し。

クロ:(M)あの真っ青な空までの距離は、この町から、日並町くらいまでだって
クロ:(M)変わり者のあいつが言っていた。

クロ:(M)それで、その先に宇宙があって。
クロ:(M)……俺はそこを目指して、旅立った。

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