バレンタインコメディ。
ウォール番外編。通常ウォールはこちら
〇文字数:約3500文字
〇推定時間:10分
〇登場人物:3:2
真壁純一(まかべじゅんいち):29歳。若く有能。第二小隊隊長。出世頭なのでモテる。
佐久間カレン(さくまかれん):26歳。イギリス×日本のハーフ。第二小隊隊長補佐。なにかとツッコミに忙しい。
井上義輝(いのうえよしてる):16歳。チョコほしい。がんばれノリツッコミ。
本条わかば(ほんじょうわかば):16歳。チョコうまい。
東雲雄二(しののめゆうじ):第三小隊隊長。天才だけどオネェ。でも天才。
〇その他 0⇒ト書き
ウォール・バレンタインは唐突に/筆先ちひろ
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/:ウォール・バレンタインは唐突に
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佐久間カレン:な、なんですかこれ……
真壁純一:チョコレートだ。
佐久間カレン:「チョコレートだ」じゃないです!
真壁純一:失礼。バレンタインのチョコレートだ。
佐久間カレン:そういうこと聞いてるんじゃありません!毎年言ってるじゃないですか!部屋を私物化するなって!
真壁純一:第二小隊の部屋だから俺の部屋みたいなものだろう?
佐久間カレン:違います!第二小隊の!部・屋です!もー足の踏み場もない……。
本条わかば:ガサガサ、んー次はどれにしようかなー。
佐久間カレン:はいそこ!人のチョコレートを食べない!
本条わかば:えーでも隊長が食べていいって。(食べながら)
真壁純一:おーいいぞ、どんどん食え。
本条わかば:ね?
佐久間カレン:(ため息)。真壁隊長にって、女性陣が折角持ってきてくれてるんですから、ご自分で食べたらどうです?甘党のくせに。
真壁純一:俺宛てということは、第二小隊宛てということでいいだろう?
佐久間カレン:だから、なんなんですかその考え方!
真壁純一:まぁそうカリカリするな。ん、食べるか?
佐久間カレン:食べません!
本条わかば:えー、美味しいのに。食べたほういいですよー?
佐久間カレン:食べません!
真壁純一:まぁ、自分で食べてもいいんだが。若き天才を陥(おとしい)れようと、何者かが毒を仕込んでいるかもしれん。
本条わかば:ごほごほっ、ど、毒味役ってことですか⁈
佐久間カレン:冗談よ。入ってるわけないでしょ。
本条わかば:あーびっくりした。もー、真顔で冗談言うのやめてください。
真壁純一:ははは。すまない。
佐久間カレン:(ため息)自分で食べないなら貰ってこなきゃいいのに。
井上義輝:うっ、うっ、……これも真壁隊長へ…、これも真壁隊長、うっ、真壁…真壁……真壁真壁真壁うわぁぁぁぁん!
佐久間カレン:うわぁ、びっくりしたぁ。
真壁純一:おい、さりげなく呼び捨てにするな。
井上義輝:何でですか!なんで!俺の分が1個もないんですか?!
真壁純一:ん?食いたいなら好きに食っていいぞ。
井上義輝:わーい、やったぁ!って、そうじゃなくて!何で俺宛てが1個もないんですかぁぁぁ!
真壁純一:「井上、いつも助かってるぞ。ありがとう、受け取ってくれ」
井上義輝:わーいチョコだぁ!ありがとうございます、じゃねぇぇ!なんですか?ふざけてるんですか?手渡しすればいいとか思ってるんですか?てかそれ、そもそも隊長宛てのチョコですからね?
本条わかば:もーメソメソメソメソうるさいなぁ。はい、どーぞ。
井上義輝:いや、だからそれ隊長宛てのチョコだから!
本条わかば:ハッピーバレンタイン(可愛く)。
井上義輝:可愛く言えばいいってことじゃないからね?ねー、わかばちゃん、俺にないの?義理でいいから!ねぇ、ねぇぇぇぇ。
本条わかば:あるわけないでしょ、うるっせーな。あっちいけ。
井上義輝:ねぇぇぇぇぇ。なんでぇぇ。カレンさぁぁぁん。
佐久間カレン:はい、いつもありがとう。
井上義輝:だから、それは隊長宛てのチョコなんですぅぅ、うっ……カレンさんまで……。
佐久間カレン:はぁ……(重いため息)
東雲雄二:カツカツカツカツ(ピンヒールの音)。
佐久間カレン:こ、この足音は……
東雲雄二:カツカツカツカツ、バーン!(ドアを開ける音)ハッピーバレンタイィィィン!
東雲雄二:あらあら、今年もすんごい量のチョコレートねぇ。
真壁純一:おい、ノックくらいしろ。
東雲雄二:うるさいわね!この偏屈野郎!毎回毎回うちの可愛いモルモットちゃん連れ出しては頭吹き飛ばしてるあんたに用はないのよ。
真壁純一:そうか、ならば帰れ。
東雲雄二:あっ、ちょ、ちょっと離しなさいよ!ちょっとぉぉ!
東雲雄二:そこの二人用のモルモットだって手配してやったでしょ?
真壁純一:ありがとう。いつのことだったか忘れたが、いつも助かっている。
東雲雄二:心がこもってないのよ!心がぁぁ!もお!離しなさいったら!セクハラよセクハラ!きゃー!この男、セクハラよ!
0: (可能であれば小声で東雲、真壁やんややんやと続けつつ次のセリフ)
井上義輝:わかば、誰あれ?
本条わかば:あんた知らないの?第三小隊の隊長よ。
井上義輝:隊長?!
佐久間カレン:変わり者の巣窟・第三小隊のトップ。対アンデット用の銃を開発した天才でありながら、数多の実験を繰り返すマッドサイエンティスト。東雲(しののめ)雄二。
井上義輝:……ゆうじ。
佐久間カレン:俗に言うオネェよ。
井上義輝:な、なるほど。ってカレンさん。
佐久間カレン:ちょっと隠れさせて。私あの人苦手なのよ。
本条わかば:へー、カレンさんでも苦手な人いるんですね。
佐久間カレン:どういう意味かしら、わかばちゃん?
本条わかば:へ?あ、いや……んーどういう意味だろ。あはは。
東雲雄二:ところでカレンちゃんは?
真壁純一:さーな。どこか出かけたんじゃないか。
東雲雄二:嘘ね。さっきまで声が聞こえたもの。
真壁純一:よその隊の補佐官をストーカーするのはいかがなものか。
東雲雄二:誰がストーカーよ!あーぁ、なーんでアンタみたいな偏屈野郎のとこにカレンちゃんいるのかしら。カレンちゃぁぁん? どこかしら。カレンちゃぁぁん。
本条わかば:探してますよ。
井上義輝:いいんですか?行かなくて。
佐久間カレン:見たらわかるでしょ? 出て行きたくないのよ!
東雲雄二:あー!カレンちゃぁぁぁん!見つけたわぁぁん!
佐久間カレン:ひっ!
東雲雄二:そーんなところにいたのねぇ!もう隠れちゃって、照れなくてもいいのに。可愛いんだから。
佐久間カレン:て、照れてません!
東雲雄二:んふふふ、今日はね、あなたにプレゼント持ってきたの。受け取ってくれるかしら?
佐久間カレン:結構です。
東雲雄二:ありがとー!あなたならそう言ってくれると思ってたわぁ!ふんふん、ふんふーん、これなんだけどねぇ!
井上義輝:人の話全然聞く気ないな。
本条わかば:ないね。
井上義輝:よかった俺第二小隊で。(チョコレートの包みを開けながら)
本条わかば:うん、私も。(チョコレートの包みを開けながら)
井上義輝:てか、あれなんだろうな。等身大はあるぞ。(チョコレートを食べながら)
本条わかば:なんだろうね、なんか嫌な予感しかしないね。(チョコレートを食べながら)
東雲雄二:ふんふんふーん、じゃじゃーん。見て見てぇ!真壁純一、等身大チョコレートよぉ!
井上義輝:ぶっ!
本条わかば:ぶっ! え、やば、隊長そっくり。
東雲雄二:んもーそっくりすぎて、私ってば自分で自分の技術が怖い。
佐久間カレン:な、なんですかこれ。
東雲雄二:えー、だ・か・ら!真壁純一、等身大チョコレート。
佐久間カレン:違くて!そういうこと聞いてるんじゃありません。
東雲雄二:んもう、相変わらず察しが悪いんだから!
東雲雄二:(小声で)いーい、カレンちゃん、偏屈真壁はたーくさんチョコ貰ってるんだから、周りに差を付けないと。
佐久間カレン:はぁ?
東雲雄二:これを彼にあげればきーっとカレンちゃんの思いも伝わるわ!
佐久間カレン:……何を言っているのか理解ができないのですが。
東雲雄二:んもう!だーかーらー、これを渡して真壁に好きって伝えるのよ!
佐久間カレン:わーわーわーわー!何言ってるんですか!なんで私が、隊長をすすす、好きとか意味わかんないことになってるんですか!
本条わかば:え?!カレンさん隊長のこと好きなんですか?
佐久間カレン:違う!!
東雲雄二:えー?なによぉ、私はカレンちゃんを応援してあげようと思って、
佐久間カレン:頼んでないです!応援もいらないですし、てゆーか普通は「私を食べて」とか言って自分のチョコを渡すんです!
東雲雄二:あらぁ。カレンちゃんの等身大の方がよかったかしら?「私を食べて」なんて、だ・い・た・ん!うふふふふ。
佐久間カレン:あぁ!もう私何言ってんだろ。もーー!この気味の悪いチョコレートと一緒に!帰ってください!帰ってくださいぃぃぃ!
東雲雄二:あん、もう、ちょっと押さないでってば!もぉぉぉ!
真壁純一:いや、折角だ!チョコレートはもらおう。
佐久間カレン:はぁ?!
東雲雄二:あらぁ!珍しく物分かりがいいじゃない。
本条わかば:え、なになに、もしかしちゃってそーいう展開?
井上義輝:いや、たぶん隊長のあれは、たぶん違う。
真壁純一:ふむ、なかなか精巧に作ってあるじゃないか。俺そっくりだな。
佐久間カレン:そりゃ、隊長の等身大ですから。
真壁純一:この顔は、こんな感じか?にっ。
佐久間カレン:やめてくださいその営業スマイル気持ち悪い。
真壁純一:……チョコレートに似せてみたんだが。
真壁純一:まぁいい。おい、井上!
井上義輝:は、はい!お、俺?
真壁純一:いつもありがとう。お前が第二小隊に来てくれてよかった。受け取ってくれ。
井上義輝:わーい、チョコレートだぁ!
井上義輝:って、だからそれ隊長宛てのチョコだから!嫌ですよ俺、等身大の隊長チョコ食べるとか!馬鹿なんですか?
真壁純一:馬鹿とはなんだ井上。
井上義輝:急に真面目な顔するのやめてください。
真壁純一:……本条!
本条わかば:いりません。
真壁純一:佐久間くん。
佐久間カレン:絶対、いりません。
真壁純一:……ということだ。お引き取り願おう。
東雲雄二:ええ?!なんでよぉぉ!あんたさっき受け取るって言ったじゃない!
真壁純一:第三小隊は暇なのか?こんなことをしている暇があるなら
東雲雄二:暇とは失礼ね!もう協力してやんないわよ!いったい今までモルモットちゃん何匹あげたと思ってるの。
真壁純一:何度も言っているがステージ4をモルモットと呼ぶのは、やめた方がいい。
東雲雄二:うるっさいわね!私の勝手でしょ!
真壁純一:兎に角、今日はもう帰ってくれ。
東雲雄二:あっ、ちょっと押さないでよ。
東雲雄二:んもう!何するのよ!ちょっともう離しなさいよ!セクハラよセクハラ!もう、ぷんぷん丸なんだからっ!
真壁純一:いーからはやくこれと一緒に、あっ……。
東雲雄二:あっ……あぁぁぁぁ!
佐久間カレン:(N)その時、真壁純一の等身大チョコレートが倒れ、そして……割れた。
本条わかば:いや、カレンさん急にナレーションやめて?
佐久間カレン:(N)木っ端微塵に、割れた。
真壁純一:井上ぇぇぇ!
井上義輝:食わねーよ!
佐久間カレン:(N)対アンデット、軍事部隊
佐久間カレン:(N)東京23区・第二小隊は真壁純一の名から「ウォール」と呼ばれている。
佐久間カレン:(N)彼らの戦いは、まだ始まったばかりである。