レンタル彼女の透子さん、
ご相談、デートのご用命、お待ちしてまーす!
〇文字数:約5300文字
〇推定時間:20分
〇登場人物:0:3
透子(とうこ):30代。レンタル彼女をしている。
早紀(さき):26歳。最近ダメ男と別れた。
加奈(かな):26歳。結婚を控えややマリッジブルー。
〇その他 0⇒ト書き
好きに口調変えてお使いください。
レンタル彼女の透子さん/筆先ちひろ
0: 早紀、加奈、居酒屋にいる。
早紀:あーーもうマジで無理っ!
加奈:はいはい、わかった! わかったから……。
早紀:分かってないぃぃ! 全然分かってない。
早紀:いいよ? 加奈はさ半年後に結婚控えてて、幸せいっぱいでしょ?
加奈:あのね、こっちだって色々あるの。
早紀:私なんてさ、貢ぎまくった挙句フラれてさ。ちょー惨め。ううう。
加奈:はいはい、水飲みなって!
早紀:水なんか飲んでらんない~。
加奈:オヤジかよ。
早紀:26歳、金なし、男なし、
早紀:廃れたアラサー女よどうせぇぇーー!
加奈:ああああ! もう、うるさいな!
加奈:てか26でアラサーとか、デカい声で言わないで。見なさいよあっちのテーブル、
加奈:お姉様方の目が怖い……。会社のお局思い出しちゃった。背筋冷える……。
早紀:死んでやるぅぅーー!
加奈:人の話聞けっつーの。
早紀:死んでやるぅぅぅーー! うわぁぁぁん!
加奈:あーはいはい。死なないで? 死んだら悲しい。悲しいなー。とってもとっても悲しいなー。
早紀:どうせ私なんてね、ダメなやつなのよ。死んだ方がマシ。うわぁぁぁぁん。
加奈:はぁ……、めんどくさ。透子さん呼ぼ。
早紀:……え? 何その急展開。てか透子さんって誰?
加奈:知らないの? レンタル彼女の透子さん。
早紀:知らない。
加奈:ふーん。
早紀:ふーん、って、てか、今めんどくさって言ったよね?
加奈:言ってない。
早紀:え? 言ったでしょ?
加奈:言ってませーん。
早紀:いや、何その顔。ひっど。うわー傷つく。傷つくなー。
加奈:はいはい、かわいそう、かわいそうねー。
早紀:え、ちょ、もう、さっきから何なの?
早紀:てか、透子さんって誰? なんで女二人なのにレンタル彼女?
早紀:知ってるでしょ?みたいに言われたけど全然知らんし!
加奈:まぁまぁ、会えば分かるから。
早紀:ちょ、電話しようとすんなし!
加奈:あーーはいはい。自称廃れたアラサー女はいいから黙っててー。説明するより呼んだ方早いし。
早紀:めっちゃディスるやん……。何? 私のこと嫌い?
加奈:ぴっぽっぱっ! とぅるるるるー。
早紀:はぁ?! ちょ、やめてって……知らない人呼ぶとか意味わかんな……。
加奈:あっ、繋がった!
早紀:えっ、えええ?!
加奈:もしもーし、透子さん?
加奈:今ねー、三丁目のオイスターバーにいるんですけど!
加奈:えーー! 違う違う、友達と飲んでるの。
加奈:よかったら一緒にどうかなーって。
加奈:うん、全然。むしろ大歓迎。
早紀:よくなーーい!
加奈:ちょ、もう。うるさいな。
加奈:ん? あぁ、あはは。いいのいいの。
加奈:友達、男と別れたばっかりで、相談とかも乗ってあげてほしくて……。うん。
加奈:ほんとー? やったー! じゃ、待ってるねー。
透子M:と、まぁこんな感じで呼び出され、ひょいひょいとやって来た私、透子なわけですが。
0: 早紀、トイレで退席中。
透子:いやーー、加奈ちゃんの友達なかなかに拗らせてるね。
加奈:でしょ~。もう一人じゃ捌ききれなくて。いつもあんなじゃないんだけど。
透子:ふーん。まぁそれだけ好きだったってことなのかねー。
加奈:なのかなぁ……。
透子:あっ、てか加奈ちゃん彼とうまくいってるの? 前会ったとき向こうの親が面倒だーって言ってたじゃん?
加奈:そう! ちょっと聞いて!
透子:えーー何?
加奈:あり得ないの。戸籍謄本欲しいって言われて。
透子:あー……。
加奈:うちの親まで詮索しようとしてんのかなーって、怖くなっちゃって。
加奈:あと、なんか信用されてないのかなーっても思うし。
透子:それ噂に聞くけど、ほんとにいるんだ……。
加奈:いたんですよー。
透子:んで、どうしたの?
加奈:彼が間に入ってくれて。
透子:へー理解ある彼で良かったじゃん。
加奈:んまぁそこは理解があって良かったんですけど。
透子:マザコンとか大変よ~?
加奈:てかこれで私の味方してくれなかったら別れてた。
透子:まぁ、そりゃそうなるよね。
加奈:こんなこと言いたくないですけど、相手の親なんて所詮他人じゃないですか。
透子:うん。
加奈:面倒だと、ほんと早くいなくなれーって思っちゃいますよね。
透子:あはは、分かる分かる。
加奈:あーもー、こんなこと言ってる自分がヤダ。
透子:親のこと好きになって結婚するわけじゃないんだからさ、仕方ないっしょ。
加奈:そう言ってもらえると救われる……。うー……。
透子:次男がいいとか今の時代そんなに言わないけどさー、結局そういうことよねー。
加奈:ほんっと、結婚すれば幸せになれるかと思ってたけど……。
透子:まぁ、二人の問題とは言いつつも、家同士のお付き合いだからね~。
加奈:うーん。
透子:式は挙げるんでしょ?
加奈:うん。
透子:いいじゃん。最近の若い人たち、籍だけ入れてお終いって人多いし。
加奈:んまぁ、彼、実家が田舎で、しかも長男だから……。
透子:えーじゃぁ、人いっぱいでしょ?
加奈:そう! 彼の親族だけで50人超えるんじゃないかってもうびっくり。
透子:うわーすご。
加奈:あの人呼んだからあの人も呼ばなきゃとか、げっそりしちゃう。
透子:まぁ、多分? 一生に一回だし? がんばろ!
加奈:二回目は無いと信じたい……。てかあったとしても絶対式は挙げない。心に誓った。
透子:あはは。あ、ドレス決まった?
加奈:めっちゃ迷ったんですけど~、決まりました! 写真見ます?
透子:見る見る! 見せてー!
加奈:ふふ。んっとね、これ。
透子:わー、可愛いじゃん。めっちゃ綺麗。
加奈:後ろがこれで、んで、正面がこっち。
透子:えー、いいね。加奈ちゃんスタイルいいからタイトなの似合う。
加奈:ふわっとしたのと迷ったんですけど、彼がこっちがいいって。
透子:なんだ~、幸せそうに笑ってるじゃん。
加奈:んふふ、まぁ。
透子:惚気(のろけ)と愚痴と半分半分ってとこですかね~?
加奈:そんな感じ。あ、拗らせた女が帰ってきましたよ~。
早紀:だーれが拗らせた女だってー?
加奈:んー誰だろねー。
早紀:んもー、またその顔! むかつく。
加奈:あはは。
0: 加奈、店員を呼ぶ。
加奈:すいませーーん!
加奈:生一つと……。
透子:あー、私も生で!
加奈:早紀は? まだあるから平気?
早紀:うん。平気ー。
加奈:おっけー。んじゃ生二つ、おねがいしまーす。
加奈:さてと……。私もトイレ行ってくるね~。
透子:はいはい、いてら~。
早紀:いてら~。……あー、透子さんってレンタル彼女やってるんですよね?
透子:うん。あー、さてはいい歳なのにって思ったな?
早紀:い、いや全然、そんなこと。
透子:あはは。いいのいいの。初対面の人だいたいみんなそう言うから。
早紀:えー、ほんとに、お姉さんって感じだし。
透子:ふふ、ありがと。
早紀:うー、お世辞じゃないのに……。
透子:レンタル『彼女』なのにさー、なんか知らないけど女の子に人気出ちゃって。
早紀:でもなんかわかる気がする。すごい話しやすいっていうか相談したくなるっていうか……。
透子:見てこれ、私の仕事用SNS。
早紀:うっわ、めっちゃフォロワーいる!
透子:でしょ?
早紀:うん。え、透子さんって有名人?
透子:そう、有名人。
早紀:うわ、どや顔。
透子:あはは。
早紀:えー、もしかして今日のこれもお仕事?
透子:んーん、普段ならこうやって女の子たちの相談聞くのもお金もらったりしてるけど、加奈ちゃんは別。私ね、前加奈ちゃんの職場に勤めてて。
早紀:へー。
透子:なんだかんだ意気投合しちゃってさ。普通に飲み友達。
早紀:ほえー。
透子:あ、よかったら早紀ちゃんも連絡先教えてよ?
早紀:え、相談料巻き上げられる?
透子:取らないよ~。てか巻き上げるって言い方。
早紀:あはは、すみません。
透子:もう。普通に仲良くしてーって言ってるつもり。早紀ちゃんダメ男ばっかりひっかけてて面白いし。
早紀:ちょ、ダメ男って~……。
透子:えー、だって前の彼ニートでしょ?
早紀:うん……。
透子:まぁ1年は人間色々あるからいいけど、2年丸々働いてないのはなー。ちょっと難あり。んで、いくら貢いだって?
早紀:もろもろ考えたら50万くらい……。
透子:うっわぁ~。
早紀:最終的に私のお金で飲み行って、そこで出会った子のこと好きになったって。
透子:ほら~。ダメ男。
早紀:でもヒロ君、付き合う前は頑張って働いてたし……。
透子:付き合いだしたら仕事辞めちゃったの?
早紀:うん……。
透子:なんで辞めちゃったの?
加奈:『早紀のために、もっと稼げる仕事する!』
早紀:ちょっともー、ばかにしないでよー。
加奈:あはは、ごめんごめん。似てた?
早紀:全然似てない。てか似せる気もないでしょー。
加奈:いや、ちょっとは似せたつもりだったんだけどなー。あ、ただいまー。
透子:おかえりー。加奈ちゃんはヒロ君に会ったことあるの?
加奈:1回だけ。
透子:1回会っただけじゃ似ないでしょ。
加奈:えへへ。背高くて、すらっとしてて、見た目はいい男風だった。
透子:へー。んで早紀ちゃんの2個上だから28歳?
加奈:そう。
透子:イケメン、高身長。だがしかし。
加奈:ニート!!
早紀:もおおお、やめてぇぇぇ。
0: 透子、加奈、笑う。
早紀:はー、カッコよかったなぁ。
加奈:こーら。別れたダメ男にデレデレするな。
早紀:別にデレデレはしてないって、痛っ。ちょ、もう何するの―。
加奈:へへへー、早紀のほっぺぷにぷにー。
早紀:んもー、加奈の酔っぱらい!
加奈:えー、早紀の方が酔っぱらい!
透子:はいはい、どっちも酔っぱらいねー。可愛い可愛い。
0: 加奈、早紀、笑う。
透子:早紀ちゃんってさ、面食い?
加奈:そう! そうなの! 早紀ってばいっつも顔はいいけど、なーんかダメな男捕まえてくる。
早紀:だってかっこいい方がいいじゃーん。
透子:あはは。そりゃそうだ。まだ好きなの?ヒロ君のこと。
早紀:うーん、多分……。
透子:じゃあ、より戻そうって言われたらどうするの?
早紀:多分戻しちゃう。
透子:こりゃダメ子だ。
加奈:ダメ子ですね。
透子:うん。
早紀:だって好きなんだも――ん。
透子:やーまぁ好きなのは分かるけど。でも結局2年もニートしてたんでしょ? ヒロ君。
早紀:うん……。
透子:早紀ちゃんのためにいい仕事見つけるーって言いながら2年だよ?
早紀:うっ……。
加奈:挙句の果てに早紀のお金で飲みに行って、
早紀:あーあーキコエナーイ。
加奈:他に好きな人ができたって振るような男だよ?
早紀:うわぁあぁぁぁぁぁん。
透子:あーもー泣くな泣くな。
加奈:てか、お前の為に頑張る的なの嫌じゃないですか?
透子:分かる! 恩着せがましいよね。
加奈:黙って頑張ってくれればいいし、口に出してお前の為って言われるとなんか嫌になる。
早紀:わ、私は嬉しかったんだもん……。
透子:まぁ、嬉しい気持ちも分らんでもないんだけど。
加奈:なんかあれじゃないですか~、○○(まるまる)の為に頑張るって言いながら頑張る人って後から、「してやったのに」って言いません?
透子:そうそう、「してやった~」って言われるともうこっちは「頼んでねーよ」ってなるよね。
加奈:そうそう、そうそうそう! めっちゃわかる~。さっすが透子さん。
早紀:私、ヒロ君にめっちゃそれ言ってたかも。こんなにヒロ君にしてあげてるのにって……。
加奈:まぁそれで嫌になっちゃったのかもねー。
早紀:うん。
透子:私はさー、ヒロ君知らないし、知る気もないからヒロ君側がどう思ってたかなんてどうでもいいんだけど、
透子:でも相手に対して、「~(なになに)してやってる」って感情が沸くってさ、もうパートナーとしての関係性破綻してると思うんだよね。
透子:相手のために自分がしたいからしてるんだって、そう思えてる方がいいでしょ?
早紀:確かに……。
透子:まぁ私もしてやってるって思っちゃうことあるんだけどね。
透子:人間だからね、仕方ないのよ!
加奈:そーよ! そーよ!
透子:ふふ、加奈ちゃん酔っぱらい。
加奈:ふふふ。
透子:ほどほどにしないとねー。彼が心配するから。
加奈:いいのいいの。彼もよく酔っぱらって帰ってくるし。
透子:そっか。
早紀:いいなー。私も結婚したいぃぃぃ。結婚したいぃぃぃ。
加奈:結婚するから幸せってわけでもないけどねー。
早紀:うぅぅ、でも結婚したい。
加奈:ブーケ、早紀に向かって投げるね!
早紀:絶対拾うぅぅぅ、恥捨ててでも拾う! ダイビングキャッチ!!
加奈:うん!
早紀:うん!
加奈:うんうん!
早紀:うんうんうんうん!
透子:……ねぇ、早紀ちゃんまだ26でしょ?
早紀:うん。
透子:大丈夫よ~。まだまだいい男いーっぱいいるから。
早紀:そうですかねー。自信ない……。
透子:まぁ30超えるといい男どんどん結婚してくから話は別だけど。26ならまだまだぜーんぜん!
加奈:よし、私もまだまだぜーんぜん!
透子:こーら! 加奈ちゃんは男探しちゃダメでしょ。
加奈:てへ。
透子:かわい子ぶってもだめー。
加奈:……はーい。
透子:ヒロ君のことはさ、あのくそ野郎ー!って思いながら忘れちゃえばいいのよ。
透子:いい人だった~なんて思えるほど人間立派になんて出来てないから。
早紀:うん……。
透子:いい人だった~って思えるのなんてずっと先のことでさ。
透子:あ、でも彼に仕返ししてやろうとか、そういうのはやめときなね。女の格が下がるから。
透子:グチグチ言いたくなったら透子さん捕まえて!
早紀:うん。なんか元気出たかも!
透子:よしよし! 元気な早紀ちゃん可愛いぞー!
早紀:あぁぁあ、透子さん好きー!
透子:はーい、んじゃ今日の相談料2時間で5千円ねー。
早紀:えっ⁈
加奈:透子さん大人気なんだから、5千円なら安いほうだぞー。
早紀:えっ⁈
早紀:えぇえええええええええええー!!
透子M:レンタル彼女の透子さん、ご相談、デートのご用命、お待ちしてまーす! ……てへ。