作者:珠白だんご
※こちらは寄稿作品です。台本作者は珠白(たましろ)だんご先生です。
吾輩はご主人の猫なのである、其ノ二。/珠白だんご
吾輩はご主人の猫である
人間の毎日はやりたくないことばかり
ご主人は溜息を着きながらご飯を作る
めんどくさいと言いながら水浴びをする
けれど吾輩のカリカリだけは
やりたくないことではないらしい
されど忘れることは日常茶飯事だ
吾輩は猫であるからして強いのである
仕事から帰ってきたご主人が
ビニール袋とやらから
次々と何かを引っ張り出している
どうやらご主人は魔法使いになったらしい
吾輩はビニール袋の中が気になり覗いてみた
すると大人しかったビニール袋が
突然吾輩にピタッと張り付いて驚いた
逃げても逃げても追いかけてくるものだから
吾輩の耳はイカになり尻尾は杉の木のようだ
もう一度言っておくが
吾輩は猫であるからして強いのである
ゲラゲラと笑い転げるご主人を横目に
ビニール袋との戦いは続く
助けもしないで笑っているとは何事だと
そこら中の物を落としてやった
散々笑い転げたご主人が
やっとビニール袋を捕まえて
吾輩の頭を撫でながら「ごめんね」と言う
しかし顔は笑っているものだから許し難い
けれどご主人が吾輩を抱き上げて
「明日も頑張ろう」と
おでこをくっつけてくるものだから
しかたなく許してやった
人間の毎日はやりたくないことばかり
それでもご主人は一生懸命を繰り返している
そんなご主人が笑えるのなら
ビニール袋との戦いは吾輩の任務なのである
吾輩は猫である
自由気ままに生きていくのがニャン生(せい)よ
これは全て吾輩の望み通りの生き方なのである
吾輩は猫である
人間の毎日はやりたいことで溢れている
今日のご主人は仕事にはいかない
あと5分だけとも言わない
カリカリの時間になっても
起きる気配がないものだから
頭に擦り寄り喉を鳴らしてやった
するとご主人は目を擦りながら
「折角の休みなのに」と言っていたが
吾輩にはなんの事だかわからない
吾輩がカリカリを食べるのを
ボーッと眺めていたご主人だが
目が冴えてきたのか
あれよこれよと動き始めた
そんなご主人を横目に
吾輩はお腹が満たされそろそろ一眠り
なんともお日様が気持ちいい
これは良い夢が見れそうだ
大きなあくびを一つ
ふとご主人と目が合った
なんだか背中がゾワゾワしている
これはきっとろくなことがないと
慌てて逃げようとしたが
ニヤリと笑うご主人に捕まった
吾輩は猫であるからして水が嫌いなのである
吾輩は猫なのだ!
水浴びなどしなくても綺麗なのである!
どれだけ叫んでもご主人は
「大丈夫、怖くないよ。」と、容赦なく吾輩に水をかける
自慢の毛はぺちゃんこになり
愛らしい姿などどこにもない
そんな吾輩を見てまたご主人が笑う
もう一度言っておくが
吾輩は猫であるからして水が嫌いなのである
けれどこれがご主人のやりたいことならば
やりたくないことを頑張るご主人に
ご褒美をあげるのは吾輩の役目なのである
おまけに添い寝も付けるから
今夜のカリカリはちゅーる入りに違いない
そうこうしているうちに
吾輩はいつもの姿に戻っていた
ご主人は嬉しそうに
吾輩のお腹に顔を埋めて息を吸い込むと
「ああ、いい匂い」と何度も繰り返す
暫く水浴びはお断りだがどうしてもとゆうならば仕方がない
吾輩の毎日も人間の毎日と同じように
決して楽なものではないが
ご主人と一緒ならばまあ悪くはない
吾輩は猫である
自由気ままに生きていくのがニャン生(せい)よ
たまには吾輩の望み通りじゃない生き方の時もある
されど吾輩はご主人の猫なのである