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朗読台本

【朗読台本】毒を呷(あお)った姉妹【5分】

作者:清水流兎 twitter

※こちらは寄稿作品です。台本作者は清水流兎(しみずると)先生です。

毒を呷った姉妹/清水流兎

おや、いらっしゃいませ。お久しぶりですね。いえ、貴方はそうでもなかったでしょうか。とにかく、よくおいでくださいました。こんな場所で、お茶もお出しできませんが、どうぞゆっくりしていってください。

さて、今日のお話は題して『毒を呷(あお)った姉妹』。

時は少し昔のこと。ある町の裕福な家に双子の姉妹がおりました。裕福とは言いますが、この時代の裕福というのは、食べるのには困らないという程度の意味です。大人しく気立ての良い姉のローザ。いつも笑顔で活発な妹のリーリヤ。性格は正反対ながら、二人はお互いを半身のように思っておりました。
「いつも元気なリーリヤが大好きだよ」
「私も、いつも優しいローザが大好き」
そう言って憚(はばか)らなかった二人の仲の良さは町でも評判で、その微笑ましい姿は住民達を笑顔にしたと言います。そんな二人が行事で披露するローザのヴィオラ、それに合わせたリーリヤの舞いは町でもたいそう人気でした。いつか二人でもっと大きな舞台に立とう。人々に舞いを披露する度、そう語り合いました。その時の二人にとってそれは幸せで当然のことであったでしょう。

しかし、人生とはままならぬもの。階段で足を滑らせたローザを庇い、リーリヤが怪我をしてしまいました。動かなくなった足を見て、彼女は何を思ったでしょう。ローザもリーリヤを元気付けようとしましたが上手くいきません。

そんな折、ローザは一人の商人から一本の薬を手にしました。その薬とはこう言われるものです。互いを想い会う二人が真にそれを望んだならば、互いの体を入れ替えることができる。ただし、嫉妬があったならば、ただ不幸が訪れるだろう、と。

ローザはすぐにリーリヤと話をしました。二人が何を話したのかはわかりません。それからいくらか経ったあと、車椅子に乗るリーリヤがヴィオラを持ち、舞いを披露するローザの姿があったそうです。町の住民達は二人の元気そうな姿に喜びました。二人が披露する舞いに以前と違った趣(おもむき)があったとて、とやかく言う者は多くなかったそうです。

お話はここでおしまい。一見よくあるようなこのお話、貴方はどう解釈しますか。

二人は望むとおりになれたのでしょうか。二人は本当に入れ替わったのでしょうか。そして、何かを乗り越えたのでしょうか。

明確な答えはありません。貴方の胸の内に存するそれが答えであり、貴方自身です。さあ、貴方は……。

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