白い海/筆先ちひろ
宵の終わりを、告げるころ。
うねりは白く、しんしんと。
季節も時も飲み込んで。
それはきっと白い海。
夜のまどろみ、明ける頃。
うねりは白く、しんしんと。
空と大地を飲み込んで。
あれはきっと白い海。
気づいたものは私だけ。
浮かぶように飛び出した。
ひたり、わずかに冷たい水の粒。
鳥は滑るように魚になった。
石はきらきら、波に尖りを削られて。
白い海を泳ぐ私は、自由だ。
限りなく。どこまでも。
滑るように、輝くように。空を飛ぶように。
あぁ、もう間もなく
太陽が天使を連れてやってくる。
空と大地の境を告げる薄明光線。
それは、白い海を照らし出し、
眠っていた呼吸を呼び覚ます。
重い音を鳴らし、鉄の乗り物が動き出す。
トトン、トトン。始まりの音。
焦げたパン屋の香りが風に乗る。
カラン、カラン。誰かがその戸を開く音。
白い海はうねりを忘れ
私を残し、消え去った。
ひたりひたり、素足で歩く。
けれど私は自由になった。
右手に握るこの粒は、白い海のおすそ分け。
気づいたものは私だけ。
朝の始まり告げるころ。
白いうねりは眠りについた。
あれは、まどろみに広がる白い霧。
あれは、私を自由にする白い海。
白い海shortver./筆先ちひろ
霧がさーっと立ち込めた朝
そこは海になる
窓を開けてそこを泳ぐ
わずかに冷たい
白い海を泳ぐ私は自由だ
まるで空を飛ぶように