黒/筆先ちひろ
真っ白な画用紙に
ぽとりと 切り取った髪の毛をこぼした
それは真っ黒なカラスになって
真っ白な空を飛んだ
ばたばたと羽をばたつかせ 不恰好に飛ぶ
出来の悪いカラスを消しゴムで擦ってやると
手の脂でどろりと伸びて
更に出来の悪いカラスになった
もうひと束、髪の毛をこぼしてやると
そこは真っ黒な海になった
出来の悪いカラスが酸素を失って沈んでいく
少しくらいもがけばいいものを
ただの炭の塊のように
真っ黒な画用紙の隅へ沈んでいった
カラスか海か、それとも私の髪か
もはや交わってしまったそれらの黒は
ただの黒でしかない
この黒はどうやって白に戻すのか
思い出せないのだ
知っているはずなのに