僕はまだ知らない。彼女が本当の雪女だという事を。
人称変更、アドリブご自由に。
BGM:魔王魂 より
挿入歌:魔王魂より where you are
効果音:効果音ラボ より
真夏の雪女/筆先ちひろ
空の端に、真っ白な入道雲。
五月蠅いほどに蝉が鳴き、
熱で焼けたアスファルトからは陽炎が立ち上る。
そんな真夏に、僕は雪女と出会った。
「そこ、教員用の下駄箱なんだけど……」
彼女は答える。ごめんなさいと。
やけに大人びた抑揚のない声。
けれどそれは透き通っていた。
纏っているのはこの暑さに逆らうような長袖の制服。
露出の少ない大人しい着こなしとは反対に、
ポニーテールから覗く白いうなじが、
私を見てと主張していた。
「転校生?」
ふるふると首を振った彼女の周りだけ、
空気が澄んで冷たい。
(もしかして君ってさ、雪女?)
なーんて。
そう聞いてしまったら、
正体がバレたと僕を取り殺すだろうか。
いかんいかん、暑さで頭がイカれてしまったらしい。
女子生徒相手に何を考えているのか……。
1:05 BGM変化
僕はまだ知らない。
彼女が本当の雪女だという事を。
観測史上、最高気温を記録するこの夏。
僕と彼女の物語が
1:21 BGM変化(風の音)
終わりに向かって、動き出す。