作者:珠白だんご
※こちらは寄稿作品です。台本作者は珠白(たましろ)だんご先生です。
ラブシチュエーション上司編/珠白だんご
上司:時刻は深夜二時過ぎ。
上司:私の部屋のベッドには部下が気持ち良さそうに寝息を立てて眠っている。
上司:そして、その部下は……女性だ。
上司:会社の飲み会で酔い潰れた部下を家まで送るはずだったのだが、家が何処なのかもわからず、彼女に聞いても何を言ってるのか全く理解が出来なかった為、仕方なく連れて帰ってきた。
上司:「(深い溜息)…。」
上司:明日の仕事の書類確認をしながら溜息をつく。
上司:こんな状況で集中できるはずがない。
上司:邪(よこしま)な気持ちがあるわけではなく、ただいつも一人でいるこの部屋に自分以外の人間がいるとゆうことに落ち着かない。
上司:(そういえば、この部屋に人を泊めるのは初めてだな……)
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上司:そんなことを考えていると彼女が小さく唸り、寝返りを打つ。
上司:「…なんだ、目が覚めたのか?」
上司:声をかけても返事はない。
上司:だが小さな声で何か言っているようにも思えた。
上司:「具合いでも悪いのか?」
上司:一旦作業を止め彼女の側へ寄る。
上司:「大丈夫か?」
上司:やっぱり返事は返ってこなかった。
上司:「なんだ、寝言か…?」
上司:彼女の眠るベッドの端へゆっくり座り顔を覗き込んだ。
上司:また何か言っている。
上司:「おい、ほんとに大丈…っ、」
上司:声をかけようとして言葉を詰まらせた。
上司:いや、彼女の寝言にどんな意味があったのか、何か夢でも見ているのか、それはわからなかったが……
上司:一瞬、心臓が大きく音を立てた。
上司:彼女が、俺の名前を呼んだのだ。
上司:「な、んだよ…」
上司:無意識に呟く。
上司:ベッドの横の小さな灯りがぼんやりと彼女を照らしている。
上司:部屋には甘い香水の匂いがふわりと充満していて、それがどうしようもなく俺の心を揺さぶった。
上司:彼女の横に手を着き静かに顔を寄せ、空いた手で細くて柔らかい髪に触れた。
上司:自分でもこの状況を把握しきれていないのにこれから一体何をしようとしているのか。
上司:彼女の寝息が自分の顔にかかる程近くなった時、
上司:彼女の視線とぶつかった。
上司:「……っ!」
上司:「……大丈夫、か?」
上司:「み、水…飲むか?」
上司:慌ててベッドから立ち上がり、平常心を装って水を取りに行こうとしたが…
上司:「……っ、」
上司:彼女が俺の腕を掴んだ。
上司:「どうした?気分が悪いのか?」
上司:眉間に皺を寄せ瞳を潤ませながら俺を見つめる彼女に再び心臓は大きく音を立てる。
上司:そして、彼女は小さな声で「傍にいてください」と言った。
上司:自分の中で何かが変わる瞬間だった。
上司:「それは、俺を誘っているのか?」
上司:「首を振る割には、手は離さないんだな。」
上司:「今更離しても遅い。」
上司:「どうして顔を隠すんだ?」
上司:「その行動全てが逆効果だってわからないでやっているのなら、お前には男を誑(たぶら)かす才能があるな(笑)」
上司:「…ふふっ、冗談だ。本気にするなよ馬鹿だな。」
上司:「で……?もう一度聴くが、これは俺を誘っているのか?」
上司:「そうか、違うのか。それなら俺は作業にもどっ、」
上司:「………。」
上司:「どうした?(笑)」
上司:彼女の行動の一つ一つがたまらなく愛しいと感じていた。
上司:「無理矢理するのは趣味じゃないんだ。」
上司:「お前が今、俺と同じ気持ちでいるなら目を閉じろ。」
上司:「……いいんだな?」
上司:「後悔するなよ?」
上司:彼女の前髪を掻き上げて、そのまま彼女へと体重をかける。
上司:「不思議だな。さっきまで見ていたお前とは全然違って見える。」
上司:「勘違いするな。可愛くて仕方がないと言っているんだ。」
上司:「余裕?まさか、そんなものあるわけない。」
上司:「歯止めがきかなくて壊してしまいそうだ。」
上司:「……嘘だ。大丈夫、酷くはしない。」
上司:「だが、夜は長い。」
上司:「これからゆっくり愛してやる……」
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上司:ここから先がどうなったかは想像に任せる。
上司:ただこの部屋には、いつまでも消えることのない甘い香りが残っているとだけ言っておこう。