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一人用声劇台本

【声劇台本】君へ『十月の朝顔』より【5分】

【声劇台本2人】十月の朝顔~夢か現か幻か【60分】2部構成台本です。 1部:十月の朝顔(30~40分) 2部:夢か現か幻か(20~30分) それぞれ別で上演していただいても構いませ...

2人用シナリオ『十月の朝顔』より朝美の独白モノローグ抜き出しです。女性視点のモノローグですが、朗読、声劇など性別関係なくどうぞお使いください。

君へ『十月の朝顔』より/筆先ちひろ

夏。私は自宅での生活が困難になった。
病室の冷気が身体に張り付いて、夏らしさなんてこれっぽっちも感じない。

明日か、明後日か、それともこれを思っている次の瞬間か。
私は颯太を忘れてしまう。そしてそのまま死んでしまう。
なんて薄情な女なんだろう。

料理もへったくそで、気も強くて、挙句の果てに颯太を残して死んでしまうなんて。
なんてダメな女なんだろう。

こんな私を愛してくれて、ありがとう。

伝えたいありがとうは山ほどあるのに、それを伝えてしまったら、きっと颯太は私のことを忘れられなくなるだろうから。

だから、伝えないまま、忘れてしまうことにした。

これが颯太の描く脚本だったなら、きっと私は手紙か、ボイスレコーダーに彼へのありがとうを、ありったけ詰め込むのだろう。

でも、私は薄情な女だ。

安い呑み屋で口説かれたことも、

春の鎌倉も、一緒に作っただし巻き卵の味も。

超低気圧を纏った不機嫌な颯太も。

べろんべろんに酔ってパンツで寝ていた颯太も。

忘れてもいいよって泣いてくれた颯太も。

ぜーんぶ忘れる、薄情で合理的な女だ。

そんな女のことなんて忘れて生きてほしい。『十月の朝顔』のあの主人公のように。

あれを書いたから私が病気になったんじゃない。

あれを書いたあなただから、きっと私を忘れて前を向いて生きてくれるから。

だから私たちは巡り逢ったんだと思う。

0:   朝美、手帳をめくる。(ト書き)

『残される方が辛いから、だから前を向くために、僕は君を忘れて生きていく』
『十月の朝顔』 鈴木颯太

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